バウハウスから学ぶ、5つのデザインアプローチ

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2019年に開校100周年を迎えた「BAUHAUS(バウハウス)」。名前を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。
バウハウスは第一次世界大戦後の1919年にドイツのヴァイマールに設立された、造形芸術学校です。ナチスの台頭により1933年に閉校するまでの14年間という短い期間でありながら、モダニズムのもととなり、今なお世界中の造形分野や現代美術に影響を与え続けています。

このバウハウスがなぜここまで大きな影響を与えたのかを探りながら、デザインする上で参考にしたいポイントなどを見つけていきたいと思います。


(1)今まで切り離されていた芸術的創作活動を社会活動と結びつけた

パウル・クレー、ワシリー・カンディンスキーといった有名な芸術家などをマイスター(親方)に迎え、「すべての造形活動の最終目標は建築である」という言葉のもとに、造形活動の教育を行いました。金属やガラス、織物といった工芸以外にも、写真、グラフィックデザイン、タイポグラフィなど分野を広げ、総合的な視点から創作へのアプローチがなされました。
今まで芸術作品といえば、もっぱら鑑賞したり、美を嗜むものとして捉えられてきました。しかしこの教育によって、芸術と、社会的に使うモノとの距離を近づけることができたのです。

(!)参考ポイント
人が日常的に使うものにも「芸術」「美しさ」を宿らせることができることが分かります。そのためにはさまざまな分野(視点)の知識や考え方が必要ではないでしょうか。
特にWebデザインで言うと、レイアウト、色彩、写真、グラフィック、タイポグラフィはもちろん、UX/UIや各種デバイスのシェア状況といった部分から、フロントエンドやアニメーションの知識まで、幅広く理解しておきたいところです。


(2)14年間、模索しながらの授業や実験をおこなった

バウハウスに招聘された教育者たちは、一般的な教育とは異なる方針のバウハウスではどのような授業をするべきか常に考えていました。ある意味授業自体が挑戦の場でした。そのため、ユニークな授業が多かったようです。
ドローイング前に、なめらかな線を引くため手首を動かす体操から始めたり、課題について一切説明せず、生徒の解釈に任せたり・・・。常に研究と実験を繰り返したことで、実験思考が身につきより多角的な視点から考えられるようになったのではと考えられます。

(!)参考ポイント
常に「試してみる」「現状を疑う」ことは、正解のない問題解決には有効な方法です。このサイクルを回していくとさらに探究心が生まれるため、物事を掘り下げるようになり、自分ごとで考えるようになっていきます。
「このデザインは目的を果たしているのか?」「本当に使いやすくなっているか?」など否定しながら新しい方法を考え出すトレーニングにもなります。


(3)「共通言語」となる基礎知識を重視し、時間をかけ勉強した

基礎技術がある人もない人も、それぞれの専門科目に進む人も、必修科目として同じ基本教育を徹底的に学びました。そのため異なる専門科目に入っても、全員の基礎知識が共通認識として前提にあります。異なる素材を組み合わせ全く新しいものを作る際にも、その前提認識を元にコミュニケーションがスムーズに進んだようです。
これにより、認識の相違によるトラブルがあまりなく、スピード感をもってトライ&エラーや新しい発想を形にしていくことができたのではないでしょうか。

※芸術家ヨハネス・イッテンが作成したバウハウスの教育カリキュラム:外側から中心に向かってカリキュラムが進み、入学後は全ての生徒が予備教程と呼ばれる基礎教育を受ける仕組み

(!)参考ポイント
1つの言葉でも、人によって認識しているイメージや意味合いが異なるケースが多く発生します。プロジェクトを行う上でも、組織に明確な「共通言語」となる知識が必要になってくるのではと思います。共通言語があることで、コミュニケーションの行き違いによりかかる時間や、後戻りするなどといった問題は減らせるのではないでしょうか。


(4)「工業化のためのデザイン」に舵をとり、ユーザー目線の機能的で合理的なデザインを提案した

バウハウス開校後、社会活動との結びつきを積極的におこなっていましたが、より明確に「工業化のためのデザイン」に舵をとるようになりました。産業革命により大量生産を実現する中、製品の機能性や合理性を追求する流れがあり、そこにバウハウスの削ぎ落とされた極めてシンプルで合理的なデザイン、グリッドデザインやフラットデザインなどが取り入れられていきました。
当時のメーカーとの連携も強め、バウハウスのテキスタイルなども発売されていきました。「工業化」となると製造方法にも制限が発生し、過度な装飾をすると高価格になってしまいます。そこで彼らは人が使いやすく、かつ生活に馴染むデザインを徹底的に追求していきました。

(!)参考ポイント
人の生活に密接に関わっているものは使いやすくし、常にユーザー目線からのデザインを心がける、ということを強く認識させてくれます。そのためには、行動心理学や脳科学といった人の動きや心理なども理解しておいた方が、より意思決定の判断が早くなるのではないでしょうか。その上で、伝えたい想い、やりたいことをフォーカスし情緒的にのせ、可視化させることが求められていくように感じます。


(5)三代目学長になった近代建築の巨匠ミース・ファン・デル・ローエの言葉

ヴァイマールからデッサウ、そしてベルリンへ移転したバウハウス。三代目学長に選ばれたのはドイツ出身の建築家、ミース・ファン・デル・ローエでした。
よく聞く「Less is more.(少ない方が豊かである)」といった言葉を残したとして知られています。「シンプルなデザインを追求することで美しく豊かな空間が生まれる」ということを表しており、デザイナー間でもよく使われ、目指すべきデザイン指針の1つとなっています。また同氏は「God is in the details.(神は細部に宿る)」という格言も残しています。(諸説あり)

(!)参考ポイント
グラフィック・Webデザインなどとも相性が良く、前者は情報整理の思考方法としても参考にされています。後者は、「ほんの些細な部分が全体的な美しさや品質を決める」という事を再認識しておきたくなる言葉です。この部分の「美しさ」とは、ビジュアルのことだけでなく、「情報設計」も含まれると考えています。
「簡潔に」「分かりやすく」「正確」にユーザーに伝えられるようにするのがデザイナーの使命です。

まとめ

上記以外にも様々な挑戦をおこなったバウハウスですが、ざっくり取り上げてみても現代に深く影響を与え続けている理由が分かりました。近代以降、資本主義がさらに発達し科学や経済がより力を持つようになりました。その流れにのり、神格化されていったのかなと感じます。
VUCAと呼ばれる今の時代は資本主義の限界も感じられ、将来どうなるのかますます予想が難しくなります。合理的なもの、機能性に優れたものが、論理的または科学的に導き出せるようになり、「良いとされているもの」が世の中に溢れ、ビジネスとしても差別化がしづらくなっていくのは否めないのでしょうか。
それに基づいて改善しなければならない部分はありますが、その中で埋もれずにブレイクスルーできるようなデザインの表現や考え方を模索していけたらなと、個人的に考えています。

参考:もっと知りたいバウハウス , 開校100年 きたれ、バウハウス ―造形教育の基礎― 東京ステーションギャラリー

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